8/28/2009

コメディ系モンスターパニック映画の名作『トレマーズ』

先日、ある映画好きと一緒にご飯を食べた時、コメディ系のB級モンスターパニック映画の名作は何かという話で盛り上がった。

そして、わたしとその映画好き氏の意見が見事に一致したのが『トレマーズ』(Tremors)と『ザ・グリード』(Deep Rising)だ。

『ザ・グリード』のほうは、さすがCGザウルスで観る者をぶっ飛ばした『ジュラシックパーク』(Jurassic Park)の5年後に作られただけのことはあり、B級と言うのは申し訳ないような高級感ただようモンスターが登場する。

いや、モンスターにただよう高級感っていったい何ぞや、と自分でもふと疑問に思うが、ここでは深く追求しないでおこう。

しかし、『ジュラシックパーク』前時代に作られた『トレマーズ』(注1)は、その低予算臭がぷんぷんただよう特殊効果撮影や、「絶対に手を入れてパクパクさせてるでしょう!」と簡単に言い当てられるローテクパペットモンスターが世の大人達の秘めた子供心をくすぐる、まさに最高級のB級映画なのである。

だいたい、映画は断崖絶壁で立ちションするケヴィン・ベーコン(Kevin Bacon)のショットから始まるのだ。
そう、まさに映画のB級度というか「小便臭さ」を象徴しているような、でも見終わったら用を足し終わった時の爽快気分になりそうな暗示に富んだショット。

そしてその後、ジーンズの中のケツの具合を直すベーコンの仕草を見るだけで後に続くコメディへの期待度が上がり、観ている者の顔はにんまりするのである。

ストーリーは単純極まりない。

ネバダ州の砂漠地帯にある人口14人の町、パーフェクションで便利屋をして暮らすバル(ベーコン)とアール(フレッド・ウォードFred Ward)は、ある日、どうにもなりようがない生活に嫌気がさし、とうとう町を出る決意を固める。

ところが、決心した日が悪かった。
隣町に続く一本道を車で走って行き当たるのは町の住人の死体。
情けない生活をしていても悪い奴じゃないバルとアールは、死んだ隣人を医者のもとへと運び、気を取り直して再び一本道を行くのだが、今度は別の住人の死体に行き当たる。

どうやら町を囲む砂漠地帯の地下には謎の怪物が潜み、住人を襲っては喰っているようなのだ。

怪物は地面に伝わるわずかな振動で獲物の位置を探知し、獲物めがけて猛スピードで地下を突き進む。
道をふさがれ、町に閉じ込められたバルとアールと住民達は、近くで地震を計測していた学生ロンダ(フィン・カーターFinn Carter)と共に、謎の地底怪物に立ち向かうのだが、果たして、住民達はモンスターから逃れることができるのか?

いやはや、なんともローテクモンスターにふさわしい簡単ちんなストーリー!
町の住民間で繰り広げられるご大層な人間ドラマもなければ、取って付けたような教訓なんてものもない。

あるのはモンスターに喰われるか、やっつけるか、逃げるかだけなのだ。

それをユーモアたっぷりの会話に乗っけて、スリルと流血を絶妙のさじ加減で混ぜ合わせて見せてくれるのだから、退屈な週末の夜に仲間とビール片手に笑い転げながら観るのにこれほどピッタリな映画も無いというもの。

また、登場するキャラクターのおバカ度&憎めない度も実に素晴らしい。
悪いやつは一人も登場せず(もっとも、鬱陶しくて「いいかげん喰われちまえ!」と思ってしまうティーンエイジャーは1人登場するが)、登場人物の暢気度が怪物に喰われるかもというスリルのなんとも言えない良い味つけになっているのだ。

だいたい、今にも喰われるかもしれない怪物に「名前をつけなくっちゃ」とあれこれ考えるなんて、暢気じゃなければやってられない。

その上、足下にいる怪物に、その怪物がいったいどこからやってきたのか、「宇宙からきた」だの「放射能のせいだ」のと議論しているのだから世話がない。

だがもちろん、暢気じゃない登場人物も居る。

サバイバルマニアで超ド級のガンマニアでもあるバートとその妻ヘザーである。

来る大戦争に備えて、5年分の食料を蓄え、ありとあらゆる武器をそろえるこの夫婦は、画面に登場するたびについつい注目してしまうシーン泥棒だ。

バート役は、マイケル・J・フォックスMichael J. Fox)を有名にしたテレビドラマ、『ファミリータイズ』(Family Ties)でキートン家の父を演じたマイケル・グロス(Michael Gross)が、ヘザー役は有名カントリーシンガーのリバ・マッキンタイア(Reba McEntire)が演じているのだが、二人がまじめになればなるほど滑稽さが増し、例え武装していてもちっとも危険に見えないところがこれまた素晴らしい。(注2)

また、バルとアールの珍コンビもピタリと息が合い、なんでもじゃんけんで決めてしまうお気軽さや、二人の掛け合い漫才のような台詞の応酬にもいちいち笑える。

それにしても、いやはや、さすがケヴィン・ベーコン。
自分の名前を冠するゲーム(注3)を持っているだけのことはあり、これまでありとあらゆる映画に出ているが、それもそのはず、何をやらしても上手いのだ。

ベーコン演じるバルが驚きに遭遇したときのリアクションには、何度観ても爆笑させられる。中でもわたしのお気に入りは、

"What the hell is going on! I mean what the hell is going on!"

と叫ぶバルだ。

思うに、わたしがケヴィン・ベーコンが名優だと思い始めたのは、たぶん『トレマーズ』でこの台詞を言うベーコンを観た時なんじゃなかろうか?

いや、それとも冒頭でケツの具合を直したときか?

いずれにせよ、この手の映画にハマったのはこの映画を観たからなのは間違いが無い。
てことは、やっぱりDVDを買っとくべきなのかもしれない。



『トレマーズ』のトレーラー
ナレーションはもちろんミスター・トレーラーこと、
ドン・ラフォンテーン(Don LaFontaine)

注1:『ジュラシック・パーク』に登場する娘っこ、レックス役を演じたアリアナ・リチャーズ(Ariana Richards)は『トレマーズ』にも登場し、ここでちゃっかり怪物から逃げる予行練習をしている。

注2:その後『トレマーズ』は続編映画が3本作られテレビシリーズにもなったが、シリーズ全作に出演しているのはバート役のマイケル・グロスだけ。バートが
いかに人気キャラなのかが良くわかる。

注3:日本では「ケヴィン・ベーコン ゲーム」という呼び名でおなじみの、"Six Degrees of Kevin Bacon"というお遊び。ほとんど全ての俳優は、共演者をたどって行くとケヴィン・ベーコンにたどり着くという理論(?)から、課題の俳優を一番短いリンク(ベーコン数)でベーコンにたどり着かせることができた者が勝ちというゲーム。

例えば、マイケル・グロスの場合、『トレマーズ』でベーコンと共演しているのでベーコン数は1になり、マイケル・J・フォックスの場合、フォックスは『マーズ・アタック!』(Mars Attacks!)でサラ・ジェシカ・パーカー(Sarah Jessica Parker)と共演し、パーカーは『フットルース』(Footloose)でベーコンと共演しているのでベーコン数は2になる。(テレビでの共演も入れてカウントしても、マイケル・グロスと『ファミリータイズ』で共演しているのでベーコン数は2で同じになる。)

ベーコン数を簡単にチェックできるサイト、The Oracle of Baconもある。


[Data]
Directed by Ron Underwood
Produced by Gale Anne Hurd, Brent Maddock, S.S. Wilson
Written by
Screenplay: Brent Maddock, S.S. Wilson
Story: Brent Maddock, S.S. Wilson, Ron Underwood
Starring Kevin Bacon, Fred Ward, Finn Carter, Michael Gross, Reba McEntire, Victor Wong
Music by
Ernest Troost
Cinematography Alexander Gruszynski
Editing by O. Nicholas Brown
Distributed by Universal Studios
Release date January 19, 1990


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