3/08/2010

『アバター』とアカデミー賞と今後の社交生活

毎年、アカデミー賞の授賞式はかなり楽しみにしている。
その昔、お勤めの給料取りだった頃は、毎年早くから有給休暇を申請して休みをとり、朝からテレビに張り付いていたくらいだ。

それなのに、今年はどうも気分が乗らない。
もう結果だけチェックすれば良いか、という気にすらなっている。

それはたぶん、主要部門は既にだれが受賞するか決まったも同然で、「どんでん返しがあった場合はこういう理由でこうなる」てなところまで予想がついてしまうというのが原因の一つだろう。

また、今年は作品賞のノミニーが第16回(1943年)以来となる10作品になったのも一因かもしれない。

なんだか、「さあ皆さん、今のうちよ! ノミニー発表から授賞式までの間にDVDをガンガン売って稼ぐのよ〜!」ってな感じで、サービス残業ならぬボーナス残業に送り込まれた映画達のようにも見えて、少々興冷めしているのだ。

しかも、司会者も2人。
スティーブ・マーティン(Steve Martin)もアレック・ボールドウィン(Alec Baldwin)も好きなのだが、ついつい「作品賞のノミニーを倍にしたからホストも倍なのか? まさか不況故のワークシェアではあるまいな?」と考えてしまう。

でも、気分が乗らない本当の理由はたぶん、世の中があまりにも『アバター』(Avatar)で盛り上がっているからだろう。

別に『アバター』に恨みはない。

わたしもスゴい映画だなーと思うし、それなりに感心した。
ただ、感心したのはもっぱらその3D技術の素晴らしさとその使い方、そしてチケットの取りにくさ(=興行成績)、それから爪の先どころか掻き出した爪の垢まで軍人という悪役を演じたスティーブン・ラング(Stephen Lang)( 注1)に対してだ。

ここで白状するが、だいたいわたしは映画の途中でうつらうつらと居眠りしてしまったのだ。

それはたぶんお話がつまらなかったからで、宮崎駿の『天空の城ラピュタ』と『風の谷のナウシカ』を、『ダンス・ウィズ・ウルフ』(Dance with Wolves)や『ラスト・オブ・モヒカン』(The Last of the Mohicans)風に描いたってな感じのお話に、ついつい脳みそが「これなら居眠りしていても大丈夫」と判断したのだろう。

『アバター』の盛り上がりに付いて行けないのも当然と言えば当然か。

ちなみに、眠ってしまったのはお話的には一番つまらないところ。しかし、ひょっとしたら観客が一番「映像が美しい!」と感動し、ジェームズ・キャメロン(James Cameron)監督が映像表現で一番力を入れたかもしれないところだ。つまり、主人公のジェイクがナヴィ族の姫ネイティリといちゃつきながら、ナヴィとしての生き方を教わっている辺りである。

せっかく高いお金を出してIMAXシアターに観に行ったというのに、どう展開するか予想のつくお話の途中で頭を垂れて座席の中でうつらうつら。

すると、なんだか意味のわからない言語が耳に入ってくる。

そうなると半覚醒状態では話が追えなくなり、ふと目が覚める。

3Dとは便利なもので、字幕も飛び出してくれるから半目を開けるだけで字幕が読める。
そのついでにもう4分の1ほど目を開けてその向こうにある映像も視界の中に入れてみるのだが、ジェイクとネイティリがまだいちゃついているので、またうつらうつらとなる。

そして意味不明のナヴィ語でまた目が覚め、字幕を見るついでに映像を見て、またまどろみに戻る。

それを繰り返すこと約数十分。

ラング演じるマイルズ・クオリッチが活躍し始めてようやく居眠りがストップした。

もちろん、午前2時から始まる回を見たから、という立派な言い訳もあるのだが、夜通し映画を見て一番鶏が鳴いたら布団にもぐりこむのが珍しく無いわたしにとって、午前2時からの映画など屁のカッパのはずで、自分ではそのせいだけではないことはわかっている。

友人のエリぞうが言うように、『アバター』は映像は美しいけど話じたいはおこちゃま映画。

その『アバター』が今年の作品賞や監督賞をとるかもしれないのが今年のアカデミー賞だ。

わたしは、今年の作品賞は『ハートロッカー』(The Hurt Locker)がとって、監督賞もキャサリン・ビグロー(Kathryn Bigelow)がとるべきで、『ジュラシック・パーク』(Jurassic Park)がそうであったように、『アバター』には技術系の賞をたっぷりあげてその功績を大いに讃えれば良いと思っている。

だからたぶん、あと数時間後に迫った授賞式で『アバター』が作品賞をとり、キャメロンが監督賞を受賞したら、しばらくの間は誰彼無しにつかまえて文句を言いまくることだろう。

ということで皆さん、アカデミー賞の結果如何によっては、しばらくわたしには近づかない方がよいかもしれませんぜ。


注1)素晴らしい舞台俳優でもあるラングは、軍人役をやらせれば天下一品だ。トム・クルーズ(Tom Cruise)とジャック・ニコルソン(Jack Nicholson)が出演した舞台劇の映画化作品『ア・ フュー・グッドメン』(A Few Good Men)で、映画版でニコルソンが演じた役を舞台で最初に演じたのはラングだし、つい2〜3年ほど前は議会名誉勲章をもらった軍人達のインタビューを元 に作られた一人芝居、"Beyond Glory"で何人もの軍人を演じわけて見せた。

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