6月13日にニューヨークのラジオシティミュージックホールで開かれた、第64回TONY賞授賞式のオープニングを見てそう思った。
トニー賞授賞式のオープニングと言えば、その年のミュージカル部門にノミネートされている作品から曲をつまみ、メドレーに仕立てて見せるのがほぼ毎年のお約束。
今年もご多分に漏れず、"Million Dollar Quartet"や"Memphis"、 "Promises, Promises"に"Come Fly Away"や"Fela!"等の候補作品が次から次へと曲や見せ場のさわりをパフォーマンスし、全国のお茶の間にそれぞれの魅力をアピールしていた。
そこまでは良かった。
メドレーの最後に登場した"American Idiot"のキャスト達が短いパフォーマンスを終え、高らかに紹介されて華々しく現れたのはパンクロックグループのグリーン・デイ(Green Day)。
舞台の奥から真打登場ってな感じでお出ましあそばしたグリーン・デイは、まるで今までのミュージカルメドレーがオープニングアクトであったかのように、花火まで打ち上げながらド派手に演奏をはじめた。
それも、メドレーで紹介されたどの作品よりもたくさんの時間をもらって、'Holiday'と'Know Your Enemy'の2曲をたっぷりと。
なるほど、ミュージカル作品賞候補の"American Idiot"は、グリーン・デイの2004年の同名アルバムを元に作られている。バンドのフロントマンのビリー・ジョー・アームストロング(Billie Joe Armstrong)は、このミュージカルの生みの親とも言える演出家のマイケル・メイヤー(Michael Mayer)と共に脚本も書いた。
だからグリーン・デイがパフォーマンスすること自体は別に不思議でもなんでもないのだが、いかんせん、長い。
彼らの演奏を聴いているうちに、候補作品のミュージカルメドレーなどとっくに記憶の彼方に消え去ってしまった。舞台上にかかげられている「TONY」という大きな文字を時々カメラが映してくれなかったら、これがトニー賞の授賞式だったなんてすっかり忘れてしまっただろう。
いやはや、なんてバランスの悪い、本末転倒な授賞式なんだ!
しかし、その本末転倒ぶりはオープニングだけでは終わらず、式が進めば進むほどどんどん色濃くなっていった。
ショウの中盤、今年のトニー賞とは全く何の関係もない二人のミュージカル俳優によるパフォーマンスが始まったのだ。
そのパフォーマンスとは、ブロードウェイで成功してテレビに進出し、FOX TVの"Glee"で大人気となった2人のブロードウェイスター、マシュー・モリソン(Matthew Morrison)とリア・ミシェル(Lea Michele)によるもの。
どちらも今年のトニー賞ノミネート作品には出演していないどころか、今年ブロードウェイの舞台には立たなかったというのにこの出番の多さ。"Glee"人気にあやかった、トニー賞授賞式視聴率増加計画が進行中なのは明らかだ。
実は、トニー賞には特別賞を含めると30の賞がある。
そのうち、今年「トニー賞授賞式」としてCBSで全国放送されたのはたったの半分。
残る半分の脚本やオリジナルスコア、舞台美術、照明、衣装など、 舞台を作りあげるのに重要な役割を果たす部門賞は、全国放送が始まる1時間前にひっそり(?)と発表され、「授賞式」では結果をダイジェストに紹介されるのみ。(注1)
グリーン・デイや"Glee"のキャストのパフォーマンスにはたっぷりと時間を与えつつも、クリエイティブ・アーツ・トニー賞と呼ばれるこれらの賞の発表には時間をあげないだなんて、やはり見ていて複雑な気持ちになる。
もちろん、これが全国のテレビ視聴者の興味をブロードウェイに向けるための趣向であることは、重々承知している。
今年のアカデミー賞の授賞式に若者の興味を向けようと、映画『トワイライト』("Twilight")シリーズに出演する俳優達をとってつけたようにプレゼンターとして呼び出したのと同じこと。
しかし、もともと今年のトニー賞候補者にはスカーレット・ヨハンソン(Scarlett Johannson)やデンゼル・ワシントン(Denzel Washington)、ジュード・ロウ(Jude Law)にキャサリン・ゼタ=ジョーンズ(Catherine Zeta-Jones)など、ハリウッドの大スターがずらりと並んでいるところに、プレゼンターまで映画やテレビのスターだらけなのだ。
ヘレン・ミレン (Helen Mirren)にケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)、アントニオ・バンデラス(Antonio Bandares)にケイティ・ホームズ(Katie Holmes)、ダニエル・ラドクリフ(Daniel Radcliffe)、ルーシー・リウ(Lucy Liu)。
また、客席には"Fela!"のプロデューサーを務めたウィル・スミス夫妻(Will and Jada Pinkett Smith)やジェイZ(Jay Z)とお連れのビヨンセ(Beyoncé)もいれば、アレサ・フランクリン(Aretha Franklin)の姿もある。
まるでなんちゃってアカデミー賞かグラミー賞、はたまたエミー賞ってな様相を呈しているので、これがまさかトニー賞だなんて、お釈迦様でも気がつかないかもしれない。
トニー賞ことアントワネット・ペリー賞は、その年にブロードウェイで活躍した演劇人の功績を讃えるためのもの。
それなのに、本当に活躍した演劇人が視聴率のために集められたスターの陰に隠れるように居る受賞式なんて、おかしな話だ。
なお、この際ついでなのでいっておくが、その傾向は日本でトニー賞を生中継していたNHKにもちょっぴり見られた。
NHKでの放送を見ながらアメリカの視聴者達のトニー賞関連ツイートをリアルタイムでチェックしていて気がついたのだが、CBSで今年亡くなった演劇人へのトリビュートが放送されていた頃、NHKではアナウンサーのダンスレッスンの様子を見せていたのだ。
このアナウンサーには何ら恨みは無いが、惜しくも亡くなってしまった演劇人達の姿を見せるかわりに、女子アナのレオタード姿を見せることにしたNHKの番組プロデューサーの趣味の悪さと、演劇ファンをなめた態度には多少の恨みがある。
視聴率のためならえんやこらで、あちらこちらにハリウッドやらテレビやらのお星様(日本の場合は女子アナ?)を散りばめて視聴者の目をしばたたかせるのも良いが、何もここまでしなくても、と思ったのはわたしだけではないだろう。(注2)
注1:クリエイティブ・アーツ・トニーと呼ばれるこれらの部門賞は、今年からようやくテレビで放映されるようになった。とはいうものの、テレビ放映はタイムワーナー系列のローカルTV局、NY1のみなので、その恩恵にあずかれるのはNY近郊に住みタイムワーナーケーブルとTV契約を結んでいる視聴者だけ。他の者は例年どおりオンラインでしか見るしかない。
注2:と書いていたら、ブロードウェイのスター、ハンター・フォスター(Hunter Foster)が「トニー賞をブロードウェイに帰そう!」と呼びかけるFacebookのグループを始めたというニュースを発見。Facebookのグループ"GIVE THE TONYS BACK TO BROADWAY!!"はこちら。

まあ毎年トニー賞のプレゼンテイターで映画スターを使うのは常なんですが、今年は最前列に映画スターでプロデューサーって人たちがずらっと並んだりしたんで、余計ハリウッド化した感じですよね。しかもプレイの主演男優賞にいたっては、ノミニーは全員映画スターだし。
返信削除アキームさんが例にあげたハンター・フォスターとかFBに「トニー賞をブロードウェイに戻そう」とかいうグループとかブロードウェイのお祭りなのに、ハリウッドに占領されてなんたること、ってCBSからケーブル局に移して、本当のブロードウェイ関係者によるトニー賞にしよう、って趣旨らしいんですけどね。来年はラジオシティホールを使えないそうで、別のホールに移るらしいのですが、以前のようにブロードウェイの劇場に戻るとも思えず。
私はそれよりもなによりも、ケイト・ホームズのあの胸をつぶしたドレスが気になって気になって(笑)。
@トニー賞にトニーさまが出ていなかったからすねてる人さん
返信削除ええ、わたしも噂に聞いたトニー様のお出ましを今か、今かと待っていましたとも!なのに裏切られて恨み倍増でっす。
来年ラジオシティが使えないってニュースを聞いた時、「ひょっとしたらハリウッド席を減らすため、捨て身のブッキング担当者がわざとブッキング忘れたんじゃね?」と勘ぐりました(笑)
ケイティ・ホームズは確かにドレスの上に垂れ下がるつぶれた胸から目が離せませんでしたよね! そのせいか、余計に横のダニエルくんが息子のように見えました。
あれ? 待てよ? 横にいたのってダニエルくんですよね? トム・クルーズも似たようなサイズなのでわからないや!(笑)
ケイティって普段トムと一緒のときはもうこれ以上ペッタンコは裸足しかありませんぜ、ってなぐらいな靴はいているので、トニー賞のときは相手を気にせずにおもいきりヒール履きました、って感じでしたね。だからダンはあまりにもホビットのようでしたよ、気の毒に。
返信削除例のFBの運動はハンターの奥さんがレッドカーペットを通るのはノミニーとプレゼンター(つまりはほとんどハリウッドスター)だけって言われて怒ったからって噂になっています。呆れるわ~
@FBは公人には鬼門だと思う人さん
返信削除んまっ! ジェニファーちゃんったら!
どこのレッドカーペットでもそうやってセレブを選り分けてるけど、やはりトニー賞のレッドカーペットでブロードウェイのスター(の定義は難しい)夫婦がパンピー扱いされたってのが逆鱗に触れたのかしらん? サットンも一緒だったら違ったかもね〜。